映画評論0 シンゴジラ 星特10
『私は好きにした、君たちも好きにしろ』
劇中こんなようなセリフ。
これがこの映画の全てなのかなと。
さて、同じ映画を映画館行って四回観るのは人生初でございました。
この映画は、いろんな視点から見た場合、観て楽しめる人もいれば、かなり不快に思う人もいる映画だと思います。
他の方々の感想を見ても…
アニメ好き、とりわけエヴァが好きな人、従来の怪獣ゴジラ映画が好きな人という方々の楽しめる楽しめない裏切られたという論争。
政治モノが好きな保守系の方々による日本万歳、これが日本の底力だ!という意見もあればその批判、一方で、原発問題を比喩していて、素晴らしい問題提起だと左翼からの賛美もあります。
つまり、『玉虫色の解釈ができる映画』かと。
観る人の視点で、どうとでも取れる映画。
ここで、もう一度言いますね。
『私は好きにした、君たちも好きにしろ』
私の伝えたいこと、伝わりました?笑
私の個人的なエンタメ的視点、意見としては、ゴジラが巨神兵のようなレーザー砲みたいなのを口は愚か背びれや尻尾から出すのはいかがかなと思いましたが、全体的にテンポもよくまとまって、こんなに日本人にとって見やすく共感しやすい映画は久しぶりだと思いました。
無茶苦茶面白かった。
しかし、一方で…
現在の日本における国防の視点からみると、この国の安全保障の脆弱さを、リアルに余すところなく描いているところに、日本の未来に危機を感じずにはいられないのです。そして特に映画前半はそれに特化している感じがあります。
私は、この視点をエンタメどうこうよりも、結構大事なことと捉えており、こんなにシンゴジラがヒットした以上、この視点の話は避けられないと思い、『私も好きなように』続けたいと思います。
さて、政府の意思決定について、どこの国にもいえますが、結局、現場で奮闘している人の判断が的確であることが多く、上に行けば行くほど空回りしていることが歴史を見てもあまりに目立ちます。
先の大戦で軍部の楽観視により約300万人の死者が出ましたのセリフの下りや、想定外すぎるぞ!、え、〈あの巨大不明生物〉動くの?など、なんでそんな楽観的認識なの?と言わんばかりの上層部のお花畑具合が赤裸々に露呈してます。
ちょっと前の国会答弁で見られた集団的自衛権や安保の神学論争みたいな馬鹿馬鹿しさを比喩しているようにも見えました。
シンゴジラ前半は、悪い意味でリアルだなと思わずにはいられないシーンが満載です。
アメリカにやってもらおう!なんて発言してたシーンも情けないたらありゃしません。
日米安保を理解していない人間が上層部にいる現実…
こんなんで国を守れるの?と不安になる人もいるのではないでしょうか?
この映画はフィクションですが、おそらく、ゴジラ以外はノンフィクションに限りなく近いんだろうなという現実身を帯びた恐怖があります。
とりわけ政府対応、官僚の縦割り社会、会議をしないと進まない決断。こりゃやばい…
今一度国民一人一人が、危機に対処できる迅速な立憲主義、民主主義の運営とはなにかを考える必要があると思います。
そして、さらに問題なのは後半。
寄せ集めの変わり者日本人が底力を見せつけゴジラを抑え込むというハッピーエンド。
後半は、前半とガラッと変わり、完全にアニメの妄想世界に見えました。
もちろんエンタメとしてはかなりオモロイ笑
すんごい好きです。
映画自体は最後不幸中の幸いな感じて終わりますが、最悪のシナリオを回避したところに庵野監督の日本に対する『好きにした』を感じますし、今までの庵野秀明氏のやりたかった集大成がここにある!的な印象を強く受けました。
でもね…
あくまでも日本の未来を考えた国防の視点からは、日本人のお花畑感を目覚めさせるためにも、むしろ最後は飛びっきりのバッドエンディングでも良かったと思います。
色々意見は分かれるとは思いますが。
シンゴジラがただの映画なら、エンタメ話で終わりでよかったんですが、いかんせんここまでヒットしている現実から、社会の見方に対する影響力は計り知れないわけです。
劇中前半部分の今の日本における安全保障の脆弱さを知らしめるにはもってこいなんですが、後半が……笑汗
あの情けなくともカッコイイ日本人の底力、共感できるけど、現実には……
この日本人の特有の思想がかなり危険に思います。あんまりネタバレもしたらいけないので詳しくは避けますが、現実は、日本の安全保障は穴だらけでヤバすぎるのが私の考えです。
後半は、お花畑の中の物語。
シンゴジラは、今を生きる日本人に対して様々なことを考えるきっかけになると思います。
まあとりあえずとりとめなく書きましたが、あなたも一度観ることをオススメします。
是非、国を守るには?という視点からも観て下さい。
ここまでお読み頂きありがとうございました。